という、ことで今回は日本で今でも使われている動物生薬のお話をします。
①セミの抜け殻
まず1つ目は夏の風物詩セミさんです。

これは日本の保険適応のある漢方では唯一の動物生薬です。
具体的には消風散に含まれている「蝉退」(センタイ)というのがこれに該当します。
消風散自体は皮膚疾患でお馴染みですが、
そのかゆみを止める作用の中心となるのが蝉退と言われています。
余談ですが、蝉の寿命は1週間と言われていましたが、
去年岡山県の高校生が1か月ぐらい生きることを証明してくれました。
昆虫の中では普通に長生きな方だそうです。
②カエルの毒
2つ目は「ガマの油売り」で有名なカエルさんです。

シナヒキガエルの耳腺にある毒を集めて固めたもので、
滋養強壮系のお高いドリンクに「蟾酥」(センソ)という名前で含まれています。
学部生時代に習った強心配糖体というのが作用の軸なので、
ジギタリスとかと同じ感じの作用です。
薬剤師になりたてでドラッグストアでバイトしていた時代に
日本語も英語も話せないロシア人が
と言われて苦肉の策で救心®を売ったのは今となってはいい思い出です。
当時はめっちゃ焦りました。
③蛇の毒
続いては毒蛇です。

カエル毒もそうですが、毒って使い方にはよっては本当に薬になるんです。
薬と毒は表裏一体なので治療薬になるかどうかは医師や薬剤師次第ですね。
毒蛇は具体的にはマムシが多いですが、沖縄ではハブが主流です。
マムシは反鼻(ハンピ)という名前で滋養強壮剤に含まれたりします。
また、ハブは基本的にはハブ酒として使用されます。
反鼻チンキやハブ酒は飲んだことはありますが、
苦みと動物特有のえぐみが最悪の喉越しを醸し出しますね。
私ぐらいのレベルになれば普通に嗜めますね。
④レイヨウの角
続いての紹介はレイヨウです。

聞いたことがない人も多数いると思いますが、
このいかにもニョキっと生えた角が生薬です。
なんとなくRPGとかのアイテムとかでもありそうですね。
薬効としては鎮静、解熱、抗炎症作用らしいです。
参考;伝統医薬データベース
因みに、これは我らが救心®以外で入っているのは見たことないです。
⑤シカのフェロモン
最後はシカさんを紹介します。

「麝香」(ジャコウ)という生薬はジャコウジカのお腹あたりにある
麝香腺と言う器官の分泌物を固めたものです。
香水でお馴染み(?)のムスクとも言います。
嗅いだ記憶が昔過ぎて、どんな匂いだったか覚えていませんが甘い匂いとのこと。
成分としてはステロイドやステロールが含まれており男性ホルモン様作用もあるそうです。
参考;伝統医薬データベース
ということは麝香腺は人間でいうところの副腎皮質的なものなのかもしれません。
用途はこれもお高めの滋養強壮剤とか、我らが救心®に含まれます。
この麝香腺はオスのシカがメスを引き寄せる目的があるみたいで、
ようするにフェロモンということですね。
香水にして楽しむためにジャコウジカは乱獲され絶滅の危機に瀕しているみたいなので
よっぽど魅力的な匂いなんだと思います。
ちなみに劣化するとアンモニア臭を放つそうなのでめっちゃ臭いです。