患者さんが薬局に来るのは早く良くなりたいから
患者さんが薬局に来る真の目的は病気から早く解放され、楽になるという体験です。
薬を使うということは、そのための一つの手段に過ぎません。
患者さんのニーズは薬そのものではなく、薬を使った結果の病気が楽になるという体験です。
この認識は理解しているのと、理解していないのでは、患者さんへの接し方が異なるので重要です。
早く良くなる体験を得たい
患者さんは薬は使いたくない
また、患者さんは薬が欲しいか?
この答はNOです。(一部奇特な方は除く)
患者さんのもう一つのニーズとして薬はできる限り使いたくありません。
患者さんは病気から早く良くなるために薬を使うのであって、薬を使いたいから薬を使うわけではありません。
言い変えると、薬を使わないでいいようにするために、薬を使っています。
薬はできるだけ飲みたくない
患者さんのニーズに答えるための服薬指導
薬剤師はこの、ジレンマともいうべき絶妙な患者さんのニーズを理解してあげることが必要です。
患者さんのニーズは薬そのものではなく、楽になる体験を得ることなので、これを無視することはできません。
また、薬には副作用という負の体験も備えることから、それが起きたらどうしたらいいのか具体的な説明が必要です。
患者さんへの服薬相談で重要なのは薬の使い方などよりも、断然こちらが重要なのです。
薬の説明では、この薬はどのような症状を楽にするために使うものであるかを伝える。
薬の効果はどのぐらいで、どの程度効いてくるのかも可能な限り伝える。
副作用が生じた場合、患者さん自身がどのような行動を取るべきかを具体的に伝える。
「血圧を下げる薬です」と説明していませんか?
そんなの当たり前じゃんと思いますが、もうちょっと聞いてください。
私はその当たり前がしっかりできている薬剤師は実はそんなに多くないんじゃないかと感じています。
特に急性期の病気ではこの概念は簡単ですが、慢性期の薬に対してフォローできているでしょうか?
例えば、血圧を下げる薬が出ていたとします。
「これは血圧を下げる薬です。」
この服薬指導は間違っていませんが、患者さんのニーズとは異なります。
血圧が高くて、頭痛やめまいなどの症状が出る場合もありますが、たいていの場合は無症状です。
無症状の人に対して「血圧を下げる薬です。」と言っても楽になりたいというニーズと異なり響きません。
薬は極力飲みたくないニーズも患者さんは常に持ち合わせているため、この説明では「体調も悪くないし飲まなくてもいいや」になりかねません。
この場合の薬の説明の一例として、
「今の血圧を放置していると、脳や心臓に負担がかかります。
場合によっては、心臓発作や、半身不随、寝たきりになる可能性もあります。
そうならないようにするための薬です。」
このように現在無症状でも、放置したら将来的に起こりえる体験を通じて語ることで患者さんへの説得力が大きく異なります。
楽になるという体験を得たいというのが薬局に来る患者さんのニーズであるためです。
薬を飲まなくてもいいようにするためのフォロー
また、患者さんは薬をできる限り飲みたくないニーズは付きまといます。
いい薬剤師は薬が減るようにアドバイスしてあげることも必要です。
なぜなら患者さんは薬を減らしたいからです。
ただ、薬剤師のアドバイスで減らせる可能性がある薬は限られます。
①しっかり飲むことで病気そのものを治す薬
②健康支援によって病気が改善する可能性のある生活習慣病の薬
この2つの場合もいいフォローのための文例を挙げます。
「この薬は病気そのものを治す薬であるため、早く薬を使わなくてもよくなるようにしっかり飲みましょう。」
「この薬は残念ながら治す薬ではありません。薬を飲まなくてもよくするためには、食事の塩分量を控えること、適度な運動をすることが必要です。」
健康支援も知識がある程度必要ですので注意が必要です。
食事量が下がっている年配の方や、過度な運動で悪化のリスクがある病気など配慮もしてください。
今回は患者さんのニーズを的確に捉えたらよりよい服薬相談ができるというお話でした。