五臓六腑とは
五臓六腑は結論から言うと下記のことです。
五臓=肝・心・脾・肺・腎
六腑=胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦
「臓」は中身が詰まっている器官、「腑」は中身が空洞で物を通す器官のことです。
三焦って何?
薬剤師であっても、最低限の解剖学の知識は持っていると思います。
ただ、「三焦」ってどこを指すかわかりますか?
そう、三焦は存在しないのです。
なぜ、存在しない器官が存在するのか?
三焦は存在しません。
何故かと言うと、杉田玄白が三焦を臓器に当てはめなかったからです!
そもそも、五臓六腑とは漢方医学の言葉で千年以上前の言葉です。
もちろん、今の解剖学の知識は、その当時ありませんでした。
杉田玄白が「ターヘルアナトミア」を翻訳して「解体新書」を著したことは有名です。
その翻訳の際に、使用したのが漢方の用語でした。
新しい解剖学という概念を翻訳するのに、それを表す言葉が他になかったのです。
そして、翻訳の際に実際に解剖学として存在しない「三焦」は使用されず、
また逆に「膵」などは漢方にはなかった臓器だったため新しく漢字を作りました。
漢方医学の五臓六腑とは?
漢方医学の五臓六腑は形よりも機能として捉えるのが正しいです。
五臓六腑は唐の時代の本には既にありました。
日本は聖徳太子のいた飛鳥時代です。
当時はその臓器がどんな生理機能を持っているか知るすべはありませんでした。
この臓器がこんな生理機能を持っているだろうということ当時なりに頑張ってました。
そのため、漢方の五臓六腑と、今の解剖学・生理学は一致しません。
当時は内臓をいじる外科的な処置をするわけでもないので、
機能的な概念を把握しておくだけでも十分でした。
漢方の五臓六腑と現代の解剖学との関係
漢方の五臓六腑と現在の解剖学との相関を示します。
解剖学とほぼ同じ | 心、肺、小腸、胃、膀胱 |
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解剖学と割と近い | 肝、腎、胆、大腸 |
解剖学と全く違う | 脾、三焦 |
せっかくなので漢方的な五臓六腑がどんなものなのか説明します。
一応、漢方的な用語は極力控えて、現在の言葉で説明します。
五臓
肝
蔵血機能と言って、末梢の血液循環や、血の貯蔵に関与する臓器です。
他にも自律神経系、精神状態、筋骨格、眼の機能も担う臓器である。
イライラに弱く、精神状態に影響を受けやすい。
心
心臓は今の解剖学や生理学とほとんど一緒。
血流など循環器機能の中核を担う臓器です。
また、認知機能や体温上昇も担う臓器である。
脾
今の解剖学とは全く別の臓器と言っていいもの。
消化器系の臓器であり、消化吸収を担う臓器です。
そのため、現代の解剖学・生理学的には消化酵素を出す膵臓に近い働き。
血管とか肌の潤い、味覚も担う臓器でもある。
肺
呼吸器系を担う臓器なのでこれも現代の解剖学と近いです。
他にも、発汗や排尿などの体液バランスや体液性免疫などに近い機能を担う臓器です。
心臓とは逆に発汗などで体温下降調節もする。
腎
腎臓は多くの機能を持っています。
生殖器系、泌尿器系、成長ホルモン、骨格、脳、聴覚、歯、髪、体温上昇などです。
老化に強く関わっており、年齢を重ねると特に弱っていく機能全般が腎の機能です。
六腑
胆
胆汁の生成と排出なので、現代の解剖学とほぼ一緒です。
あとは決断力や体温上昇機能もあります。
体温上昇は心、腎、胆の3つの臓腑が担います。
小腸
脾と胃を助ける腑です。
消化吸収はほぼ脾と胃が行いますが、そこの取り漏れを栄養と水分に分ける存在です。
漢方薬を扱う上で最も無視される臓器です。
胃
食べたものを溜めて、消化するところです。
解剖学とほぼ一緒です。
大腸
食べ物の水分を吸収したり、排便します。
解剖学的には大腸と直腸と肛門を合体させた感じです。
膀胱
尿を貯留し排泄するので解剖学とほぼ一緒です。
三焦
他の臓腑を包む腑なので腹膜とも捉えられます。
気と体液(血液を除く)の通り道と言われているため、リンパ管とも捉えられます。
解剖学的にどっちが正しいとかはよくわからないので、
杉田玄白も三焦を完全に無視したのでしょう。
ちなみに気とは目に見えない、体を動かす物質と言われてます。
生物でいうとミトコンドリアやATPに該当するような感じです。