温度を感じるTRPチャネル
温度は身体のどのような機構で感じるのでしょうか?
現在、わかっているのは温度感受性TRPチャネルの存在です。
TRPチャネルは細胞膜に存在するイオンチャネルです。
イオンチャネルは電位や、リガンド、機械的刺激などで
イオンが流入し脱分極を起こすことで、活動電位を起こしたり、伝達物質を放出します。
・・・と大学の時に習った気がしますね。
難しいことを言っていますが、
要するにTRPチャネルの一部は温度刺激によりシグナルを発するのです。
温度はイオンチャネルによって感じる!
覚えておきたい温度感受性TRP
TRPチャネル自体はたくさん存在しますが、温度感受性は9つです。
その9つのうち、特に薬局でも重要なのは5つです。
覚えておきたい温度感受性TRPチャネルのサブタイプ5選
TRPV1、TRPV2、TRPV3、TRPM8、TRPA1
この5つのTRPチャネルのうち、TRPV1とTRPV2は温感刺激を感じるセンサー
TRPM8とTRPA1は冷感刺激を感じるセンサーです。
TRPチャネルの特徴
これらの温度感受性TRPチャネルにはいくつか特徴があります。
- 一定の温度閾値を超えると反応する
- 一部の化学物質がリガンドとなり反応する
- 複数の刺激が相乗的に反応するため、②があると①の温度閾値が変化する
- 皮膚の炎症状態でも温度閾値が変化する
- 生体反応としては熱感、冷感、痛み、炎症、胃腸症状などあり、
例えば、TRPV1チャネルについて言及します。
TRPV1チャネルは43度以上の温度で反応し、痛みなどの生体反応をを生じます。
唐辛子に含まれるカプサイシンもこのTRPV1を刺激し、温度刺激同等の生体反応を生じます。
カプサイシンがある状態でだと、TRPV1の温度閾値は下がり、より低い温度刺激で熱感や痛みを得ます。
その他、チャネルと活性化する刺激をまとめました。
受容体 | 刺激 |
---|---|
TPPV1 | 43度以上、唐辛子、ニンニク、生姜、山椒、黒胡椒、酸など |
TRPV2 | 52度以上、プロベネシド、機械刺激など |
TRPV3 | 32度以上39度以下、タイム、メントールなど |
TRPM8 | 25~28度以下、メントール、ローズマリー、ペパーミントなど |
TRPA1 | 17度以下、わさび、ニンニク、シナモン、ミョウガ、黒胡椒など |
薬局での応用
薬は白湯で飲むというのは常識のようで明確なエビデンスはありません。
(少なくとも私が調べた限りは見つけられませんでした。)
しかし、一部の漢方は白湯で飲んだ方が明らかに、より効果が増すのです。
大建中湯
その代表格は大建中湯です。
大建中湯は、山椒と生姜、あとは朝鮮人参と麦芽糖の飴で構成された漢方薬です。
「腹痛冷」と言ってお腹が冷えて痛むものに昔から使われていますが、
今では開腹手術後の腸癒着(イレウス)の防止のために外科でよく出ます。
これは、お腹を温めて痛みを取ったりするものですが、
TRPV1を刺激する山椒と生姜が含まれています。
要するにTRPV1の温度閾値を下げてお腹が温めているのと同じ効果を
発揮させるようにしているわけです。
そのため、冷たいもので飲むとTRPV1の活性化が妨げられ、
温かいもので飲むとTRPV1の活性化が促進します。
つまり、温かいもので飲んだ方が効く!というわけです。
風邪の漢方薬
他にも葛根湯などの風邪薬系の漢方は生姜などを含みTRPV1などを刺激します。
これらも温かいもので飲んだ方が効果的と言われています。
※そもそも、原典の傷寒論では「温服」と明記されています。
湿布薬
パップ剤はメントールと水分を含むことで患部を冷却します。
そのことにより、TRPM8を刺激することで冷却による疼痛抑制も行います。
※神経痛などは冷却で疼痛の増悪がある場合もあり注意!
しかし、メントールはTRPM8の温度閾値を30度ぐらいまであげるだけで、
実際には水分の蒸発熱などの冷却があって初めて刺激となります。
要するに、水分が蒸発して乾燥したパップ剤は冷感刺激がなくなっていくのです。
解決策の1つとしてはパップの上から霧吹きなどで湿らせたら、
メントールが蒸発しきってない限り再度冷感刺激が復活します。
参考文献