残薬管理はかかりつけ薬剤師の仕事?
患者のための薬局ビジョンをご存じだろうか?
これには厚生労働省が定めている未来の薬局の在り方が書かれている。
その中でのキーワードの一つが「残薬管理」である。
これには、かかりつけ薬剤師の役割として残薬管理が必要であると書かれている。
ただ、以前も述べた通り、かかりつけ薬剤師の仕事とは「担当すること」である。
残薬管理とは処方変更や飲み忘れなどで生じた薬の管理である。
果たして、かかりつけ薬剤師と残薬管理は関係あるのだろうか?
残薬は流通から外れた薬
残薬は患者さんが飲めなかった薬である。
その理由は、飲み忘れ、処方変更、副作用など様々ある。
それらに共通して言えることは、調剤済みの薬であること。
そして、調剤された薬はその患者さんの所有物であり、流通の最終着点。
調剤された薬は再度販売はできないため、残薬は医療資源にはなり得ないものである。
しかし、残薬管理とはその流通から外れた薬を医療資源として再利用するシステムである。
ただし、再利用されるものは処方された本人に対してのみであることと、
品質が保たれていることは最低限の条件である。
残薬管理は国のため?
残薬管理は誰のためのものであろうか?
「患者さんにとってのメリットは何か?」と聞かれたら、
たいていの薬剤師の回答は「残薬を用いて医療費を安くします。」と言います。
間違っていません。
実際に残薬で使用した分の薬剤量は減らせます。
更に、日数が減ることで調剤料も減ることがあります。
その薬剤量と調剤料の合計分は残薬利用により安くなります。
しかし、薬局で調整する場合は重複投与・相互作用等防止加算がかかります。
30点なので300円です。
更に、保険割合により安くなる金額も目減りします。
そのため、残薬管理は数が少ない場合や、薬そのもの値段が安い場合では、
安くなる金額も大したことないため、患者さんのメリットにはなりません。
逆に確認に待ち時間が少し長くなるというデメリットにはなりうるものです。
ただし、残薬管理の1人当たりの金額のメリットが少なくとも日本全体で考えると
年間100億円~6500億円の経済的効果があると言われています。
要するに、安くなるというメリットは残薬管理をする患者さんの一部しか享受されず、
ほとんどは国の医療経済のためであるのです。
患者さんのための残薬管理とは?
では、残薬管理は国のためであり、患者さんのためではないのか?
そうは言ってません。
残薬管理の安くなるという一側面に言及すると国のためと言っているのです。
残薬管理にはその他にも、患者のためのメリットがあります。
- 飲み忘れ状況を医師と共有し、正確な薬物治療の経過がわかる
- 飲み忘れ理由により、服薬スケジュールの変更などの判断材料になる
- 必要な薬だけに整理されて、服薬管理が楽になる
- 誤った薬を使うリスクを減らせる
ぱっと思い浮かぶだけでこんだけメリットがあります。
治療経過を把握して患者さんにあった治療を提供できたり、
薬による事故を減らして安全に薬を使えるようになります。
これらが患者さんへの本当のメリットであり、単に安くなるだけではありません。
残薬管理は薬剤師の全員の仕事であり、
かかりつけ薬剤師じゃないとできない業務ではなりません。
ただ、患者さんのメリットを考えると残薬だけでなくその理由などの情報を把握し、
医師へのフィードバックが必要となります。
かかりつけ薬剤師として「担当すること」で患者の情報収集が捗ったり、
医薬連携を強化しやすくなることは確かです。
そのため、残薬管理はかかりつけ薬剤師に限った業務ではないが、
かかりつけ薬剤師と相性がいい業務であることは間違いありません。