新薬などで薬を評価する目を鍛えるうえでも参考になれば幸いです。
できたらジェネリックメーカーには参考にして欲しいです。
理想の薬とは???
突然だが理想の薬とはなんだろうか?
不老不死の薬
万病を治す薬
いろいろな意見があると思う。
そこで薬剤師歴10年以上になる「へむの考える最強の薬」を紹介しよう。
薬局薬剤師の観点として、現代社会のエリクサーを語ってみよう。
今回はランキング形式で重要なファクターから順番に列挙します。
1位;安全である
まず、第一に安全であることである。
例えば、不老不死に慣れる薬だが99%は死にます。
これはどう考えても理想の薬になり得ない。
薬であるかどうか以前に毒でないことは大前提です。
また、安全域の広い薬は用量の微調整が不要である。
臨床上でもこの調整の簡便さが非常に大事である。
2位;ちゃんと効く
すごく安全な薬であったとしても、病を治さなければ意味はない。
効くというのは薬としての最低限な条件である。
また、効いても飲まないよりマシ程度ではなく、
病によって生活の支障(困りごと)が解決されるレベルが理想である。
3位;効果が長い
効果の長さも重要である
効果がいいけど、1日6回飲まないといけない薬だったら、
薬に支配された生活を強いられることになる。
理想はゾフルーザ®のように1回で終了だ。
最低限でも1日1回がいい
4位;相互作用が少ない
飲み合わせも非常に重要である。
薬同士はもちろん食べ物の制限もない方がもちろんいい。
ワーファリン®のようにいろいろな食事を制限されるのは面倒だ。
また、現代社会において空腹時という服用方法は全く適していない。
食事の前後2時間を空けて薬を飲む余裕がある人がどれだけいるだろうか?
5位;飲みやすい
経口剤であるなら、飲みやすさは非常に重要だ。
何故なら、飲まないと効かないからである。
大前提は錠剤なら大きくないこと。
大きいならそれなりに口の中で溶けることが大事である。
また、散剤なら細かすぎないこと。
細かすぎるとむせて飲みづらいです。
また、非常に苦いなどの味が原因だったりもあります。
経口栄養剤とかは消化体である程、まずいため飲みにくくなります。
6位;保管・管理しやすい
保管のしやすさも薬にとって大事です。
保管のしやすさは薬の安定性でもあって、
消費期限が長い、常温で管理できる、湿度に強い、光に強いです。
また、剤形も粉や水よりも錠剤の方が管理しやすいです。
錠剤なら床に落としても薬として形を保ちます。
ただ、錠剤でも転がりやすい剤型はすぐ転がってどこかに行くので好ましくないです。
7位;加工しやすい
加工のしやすさとは、割ったり、砕いたり、溶かしたりのしやすさです。
用量調整が不要であれば割る必要はありませんが、
砕いたり、溶かしたりできるかは、嚥下に問題がある人には非常に重要なポイントです。
また、砕いたり、溶かしたものが器具やルートなどに吸着しないかも重要です。
8位;識別のしやすい
識別しにくいことは間違えやすく事故に繋がりやすいです。
要するに白くて丸い錠剤はもう結構です。
あまりにも多すぎて他の薬と認識しにくいです。
抜薬の時も自身で管理しにくかったりします。
圏外;安い
薬の価格も薬を選択する上では非常に重要ですが、
今回はこれは除外します。
これは薬の性質よりも需要と供給だったり、
研究開発費だったり、
特許が切れているかだったり、
薬価は薬の性質そのものとは関係なしに決まるためです。
現在のエリクサー
それでは上記の条件で現代のエリクサーは何でしょうか?
完全に理想形の薬はまだないにしても、
へむ的に理想形に一番近いのはトラゼンタ®錠です。
安全性が非常に高いDPP4阻害薬であり、かつ腎機能などによる用量調整も不要。
効果もDPP4阻害薬の中でも、DPP4選択制が高いです。
マリゼブ®やザファテック®のように週1ではないものの1日1回でいい。
相互作用も非常に少ないので食前食後問わない。
大きさは直径8mmで小さいわけではないが一般的なサイズである。
保管も室温保存で、一包化も問題なし。
平たい形なので転がることもない。
粉砕は光に不安定だが、簡易懸濁も可能。
色も淡赤色であり、他の薬との識別も容易である。
これはすごいですね!
改良する余地としてはちょっと小さくなればいいかなってぐらいです。
全てがこんな薬だらけなら薬剤師もほぼ不要なんじゃないかってくらい理想形です。
ちなみに、へむは日本ベーリンガーから一円も貰ってないです。
忖度抜きですごいと思っています。
へむが望むのはジェネリックの会社さんには、
ぜひ先発よりは理想形に近い薬を出してほしいです。